漢方で、あらかじめ体質改善を行うことで、不妊治療の結果に少なからず良い影響を与えることが示唆されるデータをご紹介しておきます。
2018年『漢方+体外』の結果まとめ
こんな方にしぼって集計
体外受精が繰り返し不成功になった後に、『一陽館』において漢方で一定期間体調を整え、漢方を飲みながら再び体外受精を行った(受けようと準備した)方を対象としました。
なお、体外受精の結果判定で陽性となったケースを妊娠とカウントし、化学流産(化学的妊娠の中断)は流産にカウントします。
2018年の結果(対象人数93人)
- 準備中の自然妊娠で出産:23人
- 体外受精で妊娠して出産:48人
- 体外受精で妊娠したが流産:7人
- 体外受精するも2018年は妊娠せず:15人
2018年 体外受精で出産した人の
漢方のみでの体づくり期間(対象人数48人)
- 3カ月未満:8人
- 3カ月以上6カ月未満:9人
- 6カ月以上:31人
対象
- 対象総数:93人
- うち体外受精に向かう体づくり期間で自然妊娠:23人
※病院で複数回体外受精を行なっても妊娠にいたらなかったが、漢方のみで体調が整い自然妊娠にいたった方 - 体外受精を受けた人:70人
- 体外受精を受け妊娠し、出産した人:48人
<漢方のみでの体づくり期間 内訳>
- 3カ月未満:8人(16.7%)
- 3カ月以上6カ月未満:9人(18.8%)
- 6カ以上:31人(64.5%)
- 体外受精で妊娠後流産した人:7人
- 体外受精を受けたが本年は妊娠にいたらず:15人
- 全妊娠(78人)のうち出産した人:71人(91.0%)
考察
1. 体外受精に再チャレンジする予定だった夫婦の4組に1組もが、漢方での「体づくり」期間中に自然妊娠しています
「治療を休んでみたら妊娠した」という例にあるように、治療による過度のストレスやホルモン剤などの副反応による不調から解放されることが妊娠力を回復するきっかけとなることは珍しくありません。
治療がうまくいかず、漢方を併用した場合も同様で、自律神経のバランスが安定し、違和感なく本来の体のはたらきを補うことで、心身ともに元気になることが期待できるのです。
いわば、「不妊症」というよりも「妊娠のきっかけ」を掴めなかった方に、積極的に「授かる体」に変わるきっかけを増やすのが漢方の役割なのです。
「これでもダメ…」「やっぱりダメ…」「成功する気がしない」と、ご自身の妊娠力に自信をなくされている方も、きちんと体の状態を整えることで、本来備わった機能をいかすことにより妊娠が成立する、という可能性を試してみる意義はあると思います。
2. 間隔をあけずに体外受精を続けるよりも、一定期間、漢方での「体づくり」をしたほうが妊娠にいたる割合が高率に
「漢方はどれくらいで効果があらわれるのだろう?」という疑問を持たれるかたは多いと思います。卵子のもととなる原始卵胞が成熟卵として排卵を迎えるには、一般的に180日かかるといわれますから、しっかりと良質な卵子を生みだす力が及ぶには6か月程度を目安に見通しを立ててじっくり取り組むことも必要になってきます。
当店では、過去に体外受精で妊娠に至らなかったかたでも、6周期以上かけて漢方+カウンセリングで体づくり期間を設けた場合、高率で再チャレンジに成功されることが確認されています。(※目安となる期間や結果には個人差があります。)
体外受精で思ったほどの成果が得られない場合に、採卵や胚移植の回数を重ねていく中で収穫が得られるのを待つというスタンスではなく、漢方で妊娠に関連する内臓や神経のはたらきを積極的に整えることが「先の見えない状態」から、「主体的に妊娠成功をめざす」へと転換できると考えられます。
原始卵胞からの成長と排卵
3. 漢方は、最終手段ではなく、最初の地固めに当たります
「ダメもとの漢方で奇跡の妊娠!」という現実を目の当たりにすると、何をやってもダメだったら最後に漢方を試そう、というご意見もあるかと思いますが、妊娠が成功するには、どのような手段であれ、「体が妊娠できる状態である」ことが不可欠です。
不妊治療を選択された時点においては、それ以前には妊娠(妊娠継続も含む)に至ることがなかったという事実の蓄積があります。
なかでも特に「体質的な問題」が関わっている場合は、不妊治療前または治療開始と同時に体質改善をおすすめします。
体外受精の効率が上がらないケースや、陽性判定が出るのに妊娠を維持することができないケースでは、受精卵側の問題以外にも、漢方的みると母体となる体そのものの妊娠準備が不足した状態のままであることも少なくありません。
健康であってこその妊娠成立ともいえます。
4. 漢方では「出産できる体づくり」に取り組むことができます
「赤ちゃんが欲しい」という切実な願いに真っ直ぐ向き合い、授かる準備段階から妊娠期間中の体調管理とご出産まで、一貫して体と心をサポートすることが漢方の役目です。
一般的に体外受精での流産率(出典:日本産科婦人科学会2016年ARTデータより)は、35歳で約20%、40歳で約34%であり、「陽性判定から出産を迎えるまで」は単純な道のりではありません。
一陽館では、妊娠する時点で「出産できる状態」を考慮に入れた処方構成により、妊娠・授乳期の体調管理まで安心して服用いただける漢方薬をご提案しており、9割以上が出産に至る結果が得られています。
着床しても維持できないのは、染色体異常など原因がはっきりするものばかりではなく、特に原因不明や年齢的な問題といった釈然としない状況では、体質そのものに目を向けて体調を整えることで流産対策にも貢献できると考えています。
5. 40歳代後半で妊娠・出産されるケースの存在
最後に、お伝えしておきたいことがあります。
一陽館にて子宝相談を受けながら、漢方併用で体外受精での妊娠を目指された方の中には、45歳以上でご出産までいかれた方が、2017年は10名(体づくり中の自然妊娠が2名、体外受精が8名)、2018年は6名(体づくり中の自然妊娠が3名、体外受精が3名)おられました。
数としては小さいため、これを根拠として、“漢方を併用することで、年齢が高めの女性においても、妊娠率や生産率(無事に出産に至る率)が上昇する”とまでは言えないかもしれませんが、いち漢方薬局の成果としては、大きな意味のある数字だと考えています。