日本のART治療の現実

日本の体外受精実施件数は世界一ですが、その出産率(生産率=無事に出産に至る率)となると残念ながら世界最低ランクというのが現実です。
つまり、ものすごい数の「妊娠できない不妊治療」が行なわれているということもいえます。

ここでは、「自分に本当に必要なこと」を考えるきっかけとして、日本産科婦人科学会が公式に発表している2021年のデータ(2023年10月時点で最新)をご紹介いたします。

2021年のART治療

1. ART(生殖補助医療)とは?

ARTとは、体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)および新鮮胚移植、凍結融解胚移植などの高度生殖医療のことをいいます。

2. 公表最新データが数年前のものである理由

ARTを実施する病院は、日本産科婦人科学会に登録をし、その実績を報告することになっています。ところが、妊娠された患者さんが出産されたのちにARTを受けた病院に報告し、それを病院がとりまとめて学会に伝え、さらに学会が全国の実績を集計して年に一度公表しているため、どうしても発表までにはインターバルがあるのです。

3. 治療を受けた人の半数(45.2%)が37~42歳

2021年日本国内で行われたARTの総治療周期数は498,140件でしたが、そのうち女性の年齢が37歳から42歳の40歳前後の方のチャレンジが225,539件と約半分の45.2%を占めていました。

4. 妊娠率が18.9%、出産率(生産率)はわずか13.6%

この年行われたARTの総チャレンジのうち、妊娠につながったのは94,164件でしたので、妊娠率は18.9%になります。それでも、その後、流産されてしまうケースもあるため、結果的に出産にいたったのは67,833件で、出産率(生産率)は13.6%にまで落ち込んでしまいます。つまり100件のチャレンジが行われた中、13件が出産に至る程度の割合であることがわかります。得られた胚(受精卵)すべてを凍結保存する全胚凍結周期を総治療周期から引いた値(369,132)で計算し直すと少し値が上昇しますが、それでも妊娠率は25.5%、出産率(生産率)は18.3%です。

5. 妊娠率も出産率も30歳代後半からは低下してしまう

さらに詳細なデータを見ていくと、妊娠率や出産率は30歳代後半から低下し、逆に流産率が上昇してきます。ところが、日本でARTにチャレンジしている中心は40歳前後。チャレンジのタイミングが、やや遅くなってしまっているといえます。

6. ARTは万能ではなく、妊娠率や出産率は高くても20%台

現状よりも早い時期にARTにチャレンジすることで結果は出やすくなると思われますが、それでも年齢別の総治療周期あたりの妊娠率や出産率をみていくと、高くてもせいぜい20%台であることがわかります。

ARTは負担の大きな治療だけに期待も抱きがちですが、その程度の確率だと理解したうえで挑むことが大切。ART任せにしてしまえるほど万能な治療ではないということです。

これが一陽館の見解です

  • そもそも体外受精を選択すべきかどうかをしっかりと見定めることが大切
  • 体外受精だから高確率で妊娠できるというわけではなく、妊娠できるかどうかは体の状態次第
  • 妊娠率の低さは、ARTに挑む女性の「体づくりの不足」を意味している
  • 体外受精が必要なケースでも「体づくり」は不可欠
  • 目指すは出産。妊娠を維持する「体づくり」への意識を早い時期から持つべき

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